
抜け毛・白髪が気になりはじめたら
東洋医学では、「髪は血余(けつよ)」と言われています。
血(けつ)が十分にめぐり、余裕があって、はじめて髪としてあらわれる——
そしてその「余裕」をつくっているのが、実は日々の眠りです。
裏を返すと、体が疲れきっていたり、回復が追いついていなかったりすると、血はまず「大事なところ」に使われ、髪は後回しになる。
それは、決して特別な不調ではなく、体のとても自然な判断でもあります。
最近、
・抜け毛が増えた気がする
・髪が細くなって、ハリやコシがなくなった
・分け目やつむじが目立つ
・白髪が一気に増えた
こんな変化を感じていませんか。
今日は、東洋医学の視点と現代医学のエビデンス、その両方から「髪」と「睡眠」、そして「ホルモン」との関係を、整理してみたいと思います。
髪は「毛母細胞」がつくっています
現代医学的に見ると、髪の毛そのものは死んだ細胞ですが、その根元では毛母細胞が毎日、新しい髪を生み出すべく働いています。
毛母細胞は、
・分裂スピードが非常に速い
・大量のエネルギーと栄養を必要とする
・血流とホルモンの影響を強く受ける
という特徴があります。
ここで、東洋医学の「血余」という考え方が重なります。
血はまず、脳・心臓・内臓など生命維持に不可欠な場所へ使われます。
そのうえで、余力があれば、皮膚、爪、そして髪へ。
睡眠不足や強いストレスが続くと、体は「余裕」がなくなり、毛母細胞への血流やエネルギー供給が自然と削られていきます。
髪には「成長サイクル」があります
髪は、常に同じ状態で生えているわけではありません。
成長期
毛母細胞が活発に分裂し、髪が育つ時期(約2〜6年)
退行期
成長が止まり、毛根が縮小する時期(約2〜3週間)
休止期
毛母細胞の活動がほぼ止まり、自然に抜ける準備をする時期(約3か月)
健康な状態では、全体の約85〜90%が成長期にあります。
ところが、
・睡眠不足
・慢性的な自律神経の緊張
・ホルモンバランスの乱れ
が続くと、成長期が短くなり、休止期に入る毛が増えます。
東洋医学的に言えば、「血をめぐらす力」「血を養う力」が落ち、髪まで十分に血が行き届かなくなった状態です。
毛母細胞は、なぜそんなに修復が必要なのか
毛母細胞は、日々ダメージを受けながら働いています。
・紫外線による酸化ストレス
・精神的ストレスによる自律神経の乱れ
・血流低下による酸素・栄養不足
・睡眠不足による修復時間の不足
これらが重なると、細胞内で活性酸素が増え、分裂の精度そのものが落ちていきます。
だからこそ、毛母細胞には毎晩の修復と立て直しの時間が欠かせません。
睡眠中に行われている、髪のための調整
睡眠中、体は「新しくつくる」よりも、日中に受けたダメージを回復させることを優先します。
髪の場合も同じです。髪をつくる毛母細胞、そして髪を黒くするメラノサイトという色素細胞の修復は夜に行われています。このとき重要な役割を担っているのが、
・成長ホルモン
・メラトニン
です。
成長ホルモンは、傷ついた細胞を修復し、成長期が続きやすい状態を保つ働きをしています。
メラトニンは、毛母細胞やメラノサイトを酸化ストレスから守ることで、薄毛や白髪が進みやすい環境を防ぐ一助になるとされています。
眠りが浅い状態が続くと、こうした修復作業が追いつかず、結果として薄毛や白髪のリスクが高まっていきます。
薄毛につながりやすいNG習慣
美容師さんや皮膚科の先生からもよく指摘されていることですが、薄毛につながりやすいNG習慣をあらためてまとめておきますね。
① 熱いお湯で髪を洗う
熱すぎるお湯は、頭皮に必要な皮脂まで洗い流してしまいます。
皮脂は「汚れ」ではなく、頭皮を守るバリア。
バリアが壊れると、乾燥や炎症が起きやすくなり、毛母細胞が安心して働ける環境が崩れてしまいます。
目安は 38℃前後のぬるめ。「ちょっと物足りないかな?」くらいがちょうどいいです。
② 強く洗いすぎる
ゴシゴシ洗うほど、スッキリした気がしますよね。
でも実際は、
- 頭皮の微細な傷
- 慢性的な炎症
- 血管の収縮
を招きやすくなります。
髪を育てる毛母細胞はとても繊細。
指の腹で、頭皮を動かすように洗うだけで十分です。
③ シャンプーの泡立ちが不十分なまま洗う
泡が少ない状態で洗うと、指と頭皮が直接こすれやすくなり、摩擦が増えます。
そして、毛穴をきれいに洗うこともできません。
その結果、
- 頭皮の微細な炎症
- 角質バリアの乱れ
- 血流低下
につながりやすく、毛母細胞にとってはストレスの多い環境に。
洗顔と同じで、髪も「泡で洗う」もの。
しっかり予洗いをしてから、手のひらでシャンプーを泡立てて、泡をクッションにする意識が大切です。
④ シャンプー・リンスのすすぎ残し
洗い残しは、毛穴の詰まりや軽い炎症の原因になります。
とくに注意したいのが、
- 生え際
- 耳の後ろ
- 襟足
このあたり。
シャンプーをつけながら洗う時間の2〜3倍かけてすすぐ。
「もういいかな?」からプラス30秒すすぐだけでも、頭皮環境はかなり変わります。
⑤ 朝シャン
意外とやっている方が多いようですが、寝ている間に分泌された皮脂をここで一気に洗い流してしまうと、頭皮がすごく敏感な状態になってしまいます。
皮脂は、紫外線や乾燥などから頭皮を守る大切な役割を担っています。
髪や頭皮のことを考えるなら、基本は夜に洗って、寝ている間に皮脂を分泌させるほうが理にかなっています。
出産後に起こる抜け毛の正体
出産後に抜け毛が増える現象は、分娩後脱毛と呼ばれています。
妊娠中はエストロゲンが高く、多くの髪が成長期に保たれます。
出産後、ホルモンが急激に低下すると、成長期を引き延ばしていたブレーキが外れ、
・成長期にとどまっていた髪の多くが休止期へ移行
・約2〜3か月後にまとまって抜ける
という流れが起こります。
出産後に抜け毛が増えるのは、ヘアサイクルが元に戻る過程として、ある意味自然な反応です。
ただ、問題になるのは
「そのあと、ちゃんと生え替わる力が残っているかどうか」
前述のとおり、東洋医学では、髪は「血余(けつよ)」と考えます。
生命活動に必要な血が十分に満たされたあと、その余りが髪を養う、という考え方です。
出産は、その血を一気に消耗する大きな出来事。
さらに授乳や睡眠不足が重なると、体はまず脳や内臓に血を回そうとします。
その結果、
「生きるために必須ではない髪」は、どうしても後回しにされやすい。
抜け毛が増えること自体よりも、「戻す力が追いつかない状態」が続くこと。
それが、長引く薄毛や白髪につながっていきます。
わたし自身も、出産後にこめかみの白髪が目立ったり、抜け毛に悩んだ経験があります。そして、その後も立て直すのに相当時間がかかりました。
今振り返ると、ホルモン変動だけでなく、慢性的な睡眠不足や栄養不足(とくにタンパク質や亜鉛、鉄)、そしてストレスなど複合的な問題があったと感じています。
更年期も、同じ構造が起きています
これは、更年期にも共通して見られる構造です。
更年期は、ホルモン分泌が大きくゆらぐ時期。
それに伴って眠りが浅くなり、回復力が落ちやすくなります。
その結果、
・髪の成長期を安定して維持しにくくなる
・休止期に入る毛が増えやすくなる
・毛母細胞やメラノサイトの働きも低下しやすくなる
つまり、髪に十分な血や栄養が行き渡らない状態が続きやすい。
「年齢のせい」と片づけられがちですが、実際には、血・ホルモン・睡眠のバランスが崩れた結果として、髪に変化が現れているケースが少なくありません。
頭皮だけの問題ではありません
髪の悩みは、頭皮だけを見ても解決しません。
・呼吸が浅い
・体が常に緊張している
・血流が末端まで届いていない
こうした全身状態が、毛母細胞やメラノサイトの働きを左右します。
東洋医学で言えば、血をめぐらせる力そのものをどう回復させるか、という視点です。
当院の不眠アプローチと、髪の変化
当院では、
体の緊張をほどく
↓
呼吸が深くなる
↓
血流が整う
↓
自律神経が落ち着く
↓
睡眠の質が上がる
この流れを大切にしています。
眠りが整ってくると、
・抜け毛が減ってくる
・スタイリングしやすくなる
そんな変化を感じる方もいます。
髪は正直です
髪は、単独で存在しているわけではありません。
血流・ホルモン・睡眠という、体の基盤が整ってこそ、安定して育つものです。
だからこそ、頭皮ケアだけでなく、
「どれだけ深く回復できているか」という視点が大切になります。
もし、
・眠りが浅い
・髪の変化が気になる
・ホルモンバランスが崩れているかも
そんなときは、一度ご相談ください。
髪も体も、回復できる状態を取り戻していきましょう。
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
奥沢うるう鍼灸院

